先週、スマホで内閣支持率のニュースを見ていて、ちょっと笑ってしまったんです。

ある社は「42.4%」。別の社は「62.6%」。同じ高市内閣で、同じ10月の調査です。その差、20ポイント。テストで言えば、同じ答案なのに先生によって42点と62点がつくようなものですよね。

正直に言うと、昔の僕はこういうのを見ると、すぐ「どうせこの新聞は政権びいきだから」「あっちは反政権だから」と決めつけていました。で、勝手にイライラする。誰にも頼まれていないのに。

でも今回は、怒る前にAIに聞いてみたんです。「この二つの調査、何が違うの?」って。そうしたら、これがなかなか面白い世界だったんですよ。

数字のズレは、だいたい「仕組み」でできている

低いほうの42.4%は時事通信の調査で、調査員が一軒ずつ訪ねて、顔を合わせて質問する「個別面接方式」です。高いほうの62.6%は産経新聞・FNNの調査で、こちらは電話。しかも時事は10月9〜12日、産経・FNNは17〜18日と、調べた時期も少しずれています。

聞き方が違えば、答えも変わります。たとえば読売新聞や日経新聞は「重ね聞き」をしています。これは、最初に「わからない」と答えた人に「どちらかといえば?」ともう一度聞く方法です。日経の今年6月の調査では、最初に「わからない」と答えた17%のうち、半分くらいが重ね聞きで「支持」に回ったそうです。これだけで数字はけっこう動くんですよね。

面白いのは、政治学者の菅原琢さんの指摘です。政権が変わっても、各社の「高め・低め」の並び順はあまり変わらない、と。もし数字のズレが新聞社の好き嫌いで決まっているなら、政権が替わるたびに順番もひっくり返りそうなものです。でも、そうはならない。つまり、ズレの大部分は調査のやり方、言ってみれば「ものさしのクセ」なんです。

じゃあ、どの数字を信じればいいのか。菅原さんは、同じ会社の数字を時間で追えば、流れはちゃんと実態を映すと言っています。他社と比べるんじゃなくて、先月の自分と比べる。そう見ると、10月は7社すべてが「横ばいか、下がり気味」で揃っていました。バラバラに見えた数字が、実は同じ方向を指していたんです。

もちろん、各社の色がまったくないわけじゃありません。朝日新聞はマイナス1ポイントを「横ばい」と書き、テレビ朝日系のANNはマイナス11.2ポイントを「急落」と書きました。見出しの言葉選びには、その会社のクセも、読まれたいという事情も出ます。ただ、そこは人の悪意というより、クリックされたいという仕組みの話だと思っています。

「偏向だ!」と感じる心のほうにも、クセがある

ここでもう一つ、知っておくとラクになる話があります。

1985年、アメリカのスタンフォード大学で、ヴァローン、ロス、レッパーという三人の心理学者が実験をしました。中東の事件を扱った同じニュース映像を、イスラエル寄りの学生とパレスチナ寄りの学生に見せたんです。結果、どちらのグループも「この報道は自分たちの側に不利に偏っている」と感じた。同じ映像なのに、です。

これは「敵対的メディア効果」と呼ばれています。思い入れが強い人ほど、中立な報道でも「敵の味方をしている」と見えてしまう心のクセです。

つまり、ニュースを見て「偏ってる!」とカッとなったとき、偏っているのは報道かもしれないし、自分の目かもしれない。どっちもあり得るんですよね。

ちなみに、ネットでよく見る「我々が聞くものはすべて意見であって事実ではない」という名言。マルクス・アウレリウス(2世紀のローマ皇帝で哲学者)の言葉として出回っていますが、彼の著書『自省録』にこの文は見つかっていません。アメリカのファクトチェック団体ポリティファクトは「誤り」と判定しています。しかも一緒に載っている肖像画が、別の皇帝カラカラだったりする。事実を疑えという名言そのものが、事実じゃなかったわけです。ちょっと出来すぎた話ですよね。

これはニュースだけの話じゃありません。クラスや職場で「あの人、こう言ってたらしいよ」と聞いたとき。SNSで誰かの発言の切り抜きが流れてきたとき。一人の評判だけで決めつけると、たいてい誤解したまま怒ることになります。支持率と同じで、何人かの話を並べてみる。それだけで、見え方はけっこう変わるんです。

ここで、あなたに三つ聞かせてください。

一つめ。最近いちばんモヤっとしたニュースや投稿は何でしたか。それ、別の情報源でも確かめましたか。

二つめ。「あの人はああいう人だから」と決めつけている相手はいませんか。その評判、何人から聞いた話でしょう。

三つめ。怒っていた時間で、本当はやりたかったことは何でしたか。

怒ること自体が悪いとは思いません。理不尽なことには怒っていい。ただ、ものさしのクセで生まれたズレに怒るのは、ちょっともったいないんです。

だから僕は、エネルギーを八割と二割に分けることにしています。八割は、自分の生活や仕事、家族や友だちとの時間に使う。ニュースに使うのは二割。その二割も、決めつけて怒るためじゃなくて、「なんで違うんだろう?」と面白がるために使う。AIに「この二つの調査の違いを、出典つきで教えて」と頼めば、数分で並べてくれます。もちろんAIだって間違えるので、出典は自分で一度のぞく。それでも、一人で検索して一人でイライラするより、ずっとラクです。

『自省録』の中には、本当に「宇宙は変化、人生は思いなし(受け止め方)」という短い一句があります。出来事そのものより、それをどう受け取るかが心を揺らす、ということです。数字が違って見えたら、怒るより先に「ものさしは何だろう?」と聞いてみる。世界をあるがままに見るって、案外そういう小さな手間なのかもしれません。

そうすれば、ニュースを見るのがちょっと楽しくなるかも。人生も、少し面白くなるかもしれません。

――決めつける前に並べてみる。それだけで、怒る理由はだいたい半分になる。


参考

  • 時事通信 10月世論調査(個別面接方式、10月9〜12日):nippon.com
  • 10月中旬の各社調査一覧:rakuraku.grandjete.work
  • 菅原琢「内閣支持率が報道各社で異なるのはなぜ?」:アゴラ
  • Vallone, Ross & Lepper (1985), Journal of Personality and Social Psychology 49, 577–585:Hostile media effect
  • マルクス・アウレリウスの誤伝:PolitiFact