×仕事を増やす○仕事を減らす
ドイツのGDPが日本を抜いたとの報道があり、円安を考慮しても、労働人口で下回り、労働時間でも約45日分短いドイツに抜かれたことは、我々の働き方(主に働かせ方)を見直す上で非常に良いタイミングだと思います。
私は、日本の生産性が低いのは雇用を含めた仕組みが非常に大きく影響していると考えますが、結果的に特に真面目な人ほど自分の仕事を増やしてしまうところが仕事の非効率と生産性のなさを生んでいるものと考えています。
日本の会社員が自分の仕事を増やそうとする理由は、日本特有の企業文化や労働観に深く根ざしています。この傾向を理解するためには、以下の複数の側面から考察する必要があると考えます。
集団主義と忠誠心
日本の企業文化は集団主義に基づいており、社員は会社に対して強い忠誠心を持つ傾向があります。この忠誠心から、自ら進んで仕事を引き受け、会社のために自己犠牲をすることが美徳とされることがあります。
勤務評価と昇進システム
多くの日本企業では、勤務時間や勤務態度が評価の重要な要素となることがあります。長時間労働や多くの仕事を引き受けることが、評価や昇進に直結すると認識されているため、積極的に仕事を増やす傾向があります。
不確実性回避
日本文化は不確実性を避ける傾向が強く、完璧主義や細部にわたる注意深さが求められます。このため、予期せぬ問題を避けるために、事前に余分な仕事をしておくことが一種の保険となり得ます。
コミュニケーションの特性
日本では、間接的なコミュニケーションが一般的で、直接的な拒否や否定を避ける文化があります。これにより、仕事を断りにくい環境が生まれ、結果として自分の仕事を増やしてしまうことがあります。
労働市場の状況
終身雇用制度や年功序列の影響もあり、職場での安定を求める傾向が強いです。そのため、職場での自己のポジションを守るために、仕事量を増やして自己の価値を高めようとする動きが見られます。
これらの要因は相互に影響し合いながら、日本の会社員が自ら仕事を増やそうとする背景にあります。ただし、これには個人差があり、企業によって文化や評価システムが異なるため、一概に全ての会社員がこの傾向に当てはまるわけではありません。また、労働環境の改善やワークライフバランスの重視に向けた動きも広がっており、この傾向が変化していく可能性もあります。
考察
これらの考察から、日本の非効率性と今後のグローバル経済下での衰退の予兆が見て取れるかと思います。
すなわち、多様性と分業・共創が重要視される将来において、リモートワークを敵視する集団思考、顔を合わせないと満足できないコミュニケーション特性、VUCAの時代に逆行する過度な不確実性回避、仕事を労働時間と作業量で判断する考課システムなどの全てが時代に合わないことが想定されます。
最低時給を上げることももちろん大事ですが、今後の企業経営に一番必要とされるのは、『人生の手段として仕事を再定義する』ことであり『仕事の質(目的合致性・効率性)を元にした対価設定』を行うことではないでしょうか。
それ無しでは、生産性(市場価値、貢献度、サービス品質)の拡大・向上がないのに経費だけが上がり、グローバル経済下での日本の価値・期待が下がり続けるしかないものと考えます。
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